「十牛図(じゅうぎゅうず)」とは
禅の教えで、悟りに至るまでを10段階のプロセスで表現したものです
ビジネスにおいては人財育成の一助になる考えといえます
各段階を個別に解説していきます
はじめに
十牛図とは逃げだした牛を連れ戻し飼いならす修行の過程=自分探しの旅を通じ
禅の修行と悟りの境地に到達するまでの過程を10枚の絵で表現したものです
そこに1頭の牛が登場します。
この牛というのが「理想の自己」「自分の目指すべきもの」を表しています
真の自己を探し求めること この考えを辿ると釈迦に思想にたどり着きます
※なぜ牛なのかは、「十牛図」は中国の宋時代の禅の入門書であり、中国で身近な動物が牛であったからとのことです
尋牛(じんぎゅう)
牛を探しに旅にでた段階
真の自己を求め、自分探しの旅が始まります
見跡(けんせき)
牛の足跡を見つけた段階
先人の教えを頼りに足跡を知った状態です
先人が残した教え・情報をもとに現在の問題解決に活かしていきます
見牛(けんぎゅう)
牛の姿を見つけた段階
牛に例えて描写されていますが、牛とは「真の自己」です
本当に頼りとするのは自分自身
自分の中にある心こそ仏であると気付いたことです
得牛(とくぎゅう)
牛をつかまえるが、野生の牛は暴れだすので縄で繋ぎ留めなければなりません
牛=自分の心
心の習慣は簡単に変わらず、粗野な習性がまだ残っています
暴れだしそうになったら、しっかりと綱で繋ぎとめなければなりません(理性の働き)
牧牛(ぼくぎゅう)
暴れる牛=自分の心を飼いならしていく段階
心はざわめき動くもの
それを制御する訓練としてマインドフルネス(瞑想)で整えていきます
騎牛帰家(きぎゅうきか)
牛の背に乗り家へむかうこと
心を整えていけたならば、牛は暴れなくなります
心の盤石さに実感できた段階です
忘牛存人(ぼうぎゅうぞんにん)
飼いならした牛は忘れてしまってよいという段階
理想の自己を外の世界にある牛に例えてきましたが、外に理想を求めることは不要です
自分の心の内にこそ理想があります
人牛倶忘(にんぎゅうぐぼう)
牛も自分も忘れること
「空」の境地に到達し区別するものが無く、すべてが一つとなったと実感する状態です
※個人主義の対極にある思想です
「空」は「おかげさま=感恩の精神」の考えと表裏一体です
何もない事を誇る、自慢することではありません
返本還源(へんぽんげんげん)
無の世界から有の世界へ還ることです
原初の美しさがあらわれてくることを示しています
何もないことを知った時に、何もかもが光り輝いて感じます
※座禅とはこれを疑似体験するもの
入鄽垂手(にってんすいしゅ)
町へ出て人の為に働くこと
悟りを得て終わりではなく、人のために働く段階です
まとめ
有の世界 = 迷いの世界から始まり 1~5
無の世界 = 悟りの世界にたどり着く 6~8
もう一度迷いの世界に戻って人のために尽くす 9~10
十牛図はこのような流れで「有」と「無」の行き来を示しています
人財育成の思想としての十牛図
自身は十牛図のどの段階にいるか
部下を持つ立場であれば、部下はそれぞれどの段階か
現在の立場を把握し、次の段階に何が待ち受けているかを意識することで、いずれは入鄽垂手に至れるのではないでしょうか
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