AI研究の第一人者 矢野和男氏の2014年の著書
BookVinegar社の2014年ビジネス書ベスト10に選ばれる
要約
「人間の行動は方程式に基づいている」
「幸福度は計算できる」
「運勢は意図的に上げることができる」
このような一見非科学的なことを、ウェアラブルセンサーを用いて収集したビッグデータから、科学的に導き出したことが書かれている書籍です
また、収集したビッグデータから業務効率を上げる方法をAIにより分析
AIと人間との仕事の住み分けについての内容に触れ
さらには未来の社会を見据えた動きに言及して終わります
初版が2014年の書籍ですが内容が古く感じられる事もなく
著者の矢野和男氏(日立製作所 研究開発グループ技師長)は現在のAIブームの先駆けとなる先進的な研究内容を手掛けていたようです
収集したビッグデータを活用したAIによる実際の企業での業務改善の事例もいくつか例示されています
とあるコールセンターでは「休憩時間中の雑談が活発になれば生産性がアップする」という事実が明らかにされました
意外にも個人の能力による影響は少なく、会話の活発度による相関が大きいとの事
一般感覚的に「活発な職場は生産性が高い」というのは納得のいく結果であり、それがビッグデータにより裏付けられたことになります
また、著者はビジネスにおける「運」を「確率的に自分が必要とする知識や情報に出会う事」と定義
「運」は偶然ではなく人との繋がりの産物
仕事が上手くいく人は他者との繋がりが多い事もビッグデータの分析により判明しました
上記のコールセンターの事例同様に感覚的に正しいだろうと思われていた事がビッグデータにより裏付けられた事になります
一般企業が取り入れられる点はあるか
本書の中で挙げられた事例は膨大なデータに基づいたものである為、即時取り入れることは難しいものです
今後はAIによる業務効率化の流れが加速していくことは自明です
しかし2021年現在の状況を見ても、一般的に普及するまではもう少し時間がかかるように思います
前述の通り従来「感覚的に正しいだろう」と考えられてきた事が「正しい確率が高い」ということがAIにより示されています
「活気のある職場で生産性アップ」
「社員同士のコミュニケーションを活発にして会社の業績向上」
この様な古い精神論と思われるような取り組みも、科学的に正しいアプローチである可能性が高いと考えられます
例えば過去の遺物となりつつある社員旅行や運動会などが業績向上に繋がるものであるとAIによって証明される日が来るかもしれません
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